前回のソムリエ試験対策講座が好評だったようで、今回はその続編です。(ワインバーバハムートの日常その26ソムリエ試験対策を参照)
通常のバーバハムートの日常はお休み。ですが、以下の2⃣の実技試験での様子はドキュメンタリータッチで面白い内容になってます。ぜひ一読ください。
ちょうど時期も時期ですね。今日は以下の流れで。
1⃣テイスティング対策
2⃣実際の実技試験と論述試験での様子(シニアソムリエ、ソムリエエクセレンス編)
3⃣まとめ。

1⃣テイスティング対策
まずは一次試験に合格された方おめでとうございます。
通常のソムリエ試験なら一次試験こそが最難関なので、後は油断無いように頑張るだけです。
さしずめ、テイスティングの対策となるのでしょうが、これは単一品種のワイン(酒屋さんで1000円から5000円までのワイン)を買って飲むだけです。
ただし闇雲に購入するのではなくある程度絞って飲みましょう。
これはアカデミー・デュ・ヴァンが非常に詳細な表を作ってくれているのでそちらを確認してください。
ここでは簡単なコツを少し。
ワインを何種類もテイスティングしていると香りも味わいもだんだんと混乱してしまいますよね?
そうなった際の対策を普段から講じておきましょう。
それは一つにパブロフの犬のように一定の条件を満たせば自分の感覚をリセットできるスイッチを作っておくことです。
オススメの方法としては自分の肌の匂いを嗅ぐこと。
これは非常に有効です。
香りは特に繊細で、かつ脳の中の記憶を貯蔵しておくところと香りを感じるところが隣り合わせの為に何よりも記憶を長期保管するのに必要な能力は香りだとされています。
自分の匂いは当然何よりも普段から自分が摂取している香りですから鼻の感覚のリセットになります。
加えて、普段からそれをスイッチとして次のワインそのまた次のワインとテイスティングする前に自分の肌の香りを嗅いでから訓練しておけば、実際の試験でだされる4種類程度の酒類なら完璧にリセットして次に挑むことができます。
ぜひ普段からワインの香りを嗅ぐ前に自分の腕の香り等を嗅いでからワインを香るというクセをつけておいてください。
自己暗示にもなりますよ。
それと、後はソムリエ協会の機関紙「Sommelier」の購読です。

これもできるだけ読んでおきましょう。その時その時の世界のワイン業界の事件等が書かれていて実際に試験に出そうなワインのヒントが隠されているかもしれません。
2⃣実際の実技試験及び論述試験での様子。
これも例年どのような問題が出されたか等はソムリエ協会、及びアカデミー・デュ・ヴァンのホームページで確認してください。
これからの参考になると思います。加えてやはりソムリエ協会の機関紙「Sommelier」の購読もおススメです。特に論述等はその中から関係することがでる傾向にあります。
ただ、近年は日本のお酒に関係することが多く出る傾向にあります。
その為普段からそうした世情の情報収集も必須でしょう。
筆者が上級ソムリエの試験を受けたのは2013年。
当時はシニアソムリエとしての試験だったのですが、この年から試験内容が大幅に変更になり、どちらかというとコンクールに近い形式に変わっていきました。
また難易度も跳ね上がり、後年この年からの合格者をソムリエエクセレンスとして呼称できるという改定になったのです。
エクセレンスの試験そのものは2019年が初年度ですが、一応僕も遡っての初年度の合格者ということになるのでしょうか。

で、今回はその時の二次試験での実技、及び論述の内容を以下に書き留めます。
けっこう面白い内容なので(笑)試験に興味の無い方もどうぞ。
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京都で一次試験を受けたぼくの二次試験会場は大阪でした。
ソムリエは20人くらい、かな?
全員がそれぞれの制服に着替えて一つの部屋で待機させられます。
ここまで来るのはさすがに猛者揃いなので(笑)それ程皆緊張した面持ちでもないのですが、余計な会話をする人もいません。
無。です。
数人が呼ばれて別の会場へ。
何せ試験形式が大幅に変更になって初めて行われるシニアソムリエ試験の二次。
誰もその内容を知りません。
ま、なんとかなるかーと開き直って座っていたら僕も呼ばれました。
ここで初めて訪れる緊張感。
すると、新しい会場の前に椅子が二つ。
僕が到着して間もなく、先に椅子に座っていた人が呼ばれて中へ。
すると僕の方にも試験官がやってきて写真を4枚渡されました。
写真にはそれぞれアップでお料理が写っていたのですが、、この写真、なぜかドットがめちゃ荒い。
そして試験官は僕にこう告げました。
「試験はこの扉の向こうで行われます。
今は先程の受験者の方が試験を受けている間にこちらの写真を見てください。
後ほどこの画像を使って試験を行います。試験内容はここに写っているお料理の説明を試験官にしていただきます。
また、そのお料理に合わせるワインをそれぞれ考えておいてください。
ワインはどこのなんのワインで、ヴィンテージ等もお願いします。
そして何故そのワインを選んだのかも考えておいてください。ではちょうど今から10分間です、どうぞ。」
と、こうして唐突に渡されたドットの荒い写真を見ながらお料理とそれに合わせるワインを考えました。
写真のドットが荒いのは誰もが見たままのお料理の説明にならないようにわざとなのかも。とかを考えながらあっという間に10分が過ぎました。
そして試験官が再び現れ会場に入室を促します。
入るとテーブルが一つ。
試験官がそのテーブルを挟んで二人着席。
さらにそのすぐ側に直立する試験官が進行役です。
進行役が話しだします。
「そちらから見て右側に座られている方がゲスト。左側がホストです。そちらのすぐ側にあるグラスを使ってサービスをしてください。サービスしていただくのはそちらのサイドテーブルに置いてあるスパークリングワインです。
サービス用のテーブルはそちらの台車を使ってください。試験時間は5分です。はい。開始!」

って、感じで唐突に始まりました。
もう脳みそぐるぐるです!
え?さっき見てた写真は?
え?グラスはあれを使ってって言われたけど、あそこにあるのはテイスティンググラスだけやん!
スパークリングワインをサービスするんやんね?テイスティングで??
え?なにこれ?まずはシャンパングラスを用意できませんでしたっていう謝罪から始めるの??
えーーーー??どうしよう!!!
って、めちゃめちゃテンパってたんですが時間制限もありますし、質問が許される感じでもなかったのでとにかく動きだしました。
もう振り切って用意されたテイスティンググラスをさも当然とばかりに使う事にして、グラスの汚れがないかを確認するフリ!!
サービス台を移動してゲストのテーブルの前に持ってくる!
スパークリングワインのラベルを確認するフリからホストに見せる!
オッケーをもらってからの抜栓、テイスティングもホストに確認!
そしてグラスを設置してホストテスト。オッケーをもらったらゲストにサービスしてお次にホストにサービス!!
したところで時間切れでした。(´;ω;`)ウゥゥ
本来ならここで「ごゆっくりどうぞ」的なコメントを言えれば完璧だったのですが。
5分は短い!!
正直かなり急いだサービスだったのでそっちの方が心配だったのですが、実際には時間切れ。
うーん。これ以上早いのは優雅なサービスからは程遠いような。。とか思ってたら即座に次の問題が発動。
進行役いわく
「先程サービスしていただいたスパークリングワインを今度はゲストのお二人に説明をしてください。時間は2分です。はいどうぞ!」
って感じでやはり唐突に次の試験が開始!!
ですが!!
これがまた問題!!!
用意されていたスパークリングワインはスペインのカバ!
それもセミセッコという現在の感覚で言うならやや甘口のスパークリングワイン!
はっきり言いますが、この時点で僕のソムリエキャリアは15年以上!
そしてそのほぼ全てが高級店!

半辛口のスペインのスパークリングワインを使ったこと等ない!!!
カバをバカにしてるのでも無ければ半辛口をバカにしてるのでもありません!
シンプルな棲み分けの問題です。
僕が働いてきたお店でそれらを必要とされることが無かったが為の知らんってだけ!
でも、問題になったのだからやるしかない。
さっきテイスティングしながらさりげなくチェックしてました!
裏ラベルに簡単な説明があることを!!
「こちらはスペインのスパークリングで~~というモノです。生産方法はシャンパンと同じ瓶内二次発酵。
地中海沿岸のペネデスで造られるスパークリングワインで、こちらはセミセッコと言われる半辛口です。
現代の感覚でいうならやや甘口といったほうが良いでしょうか。
味わいはアタックの辛口からボディの半甘口へと広がっていくのでこれ一本でコース料理を楽しむこともできます。
あえて一品で合わせるならカタルーニャ風煮込み料理などは素晴らしい相性をみせるでしょう。」
みたいな話しをしたのですが、これを読んでいただいても解るように、この程度で2分は稼げません!!
まったく使ったことのないアイテムで2分は長い!!
あと、自分が何分喋ってるかなんてアナウンサーじゃないんだから解らん!!(笑)
ま、そっちは進行役の方が「今1分です」とか言ってくれるんだけど、それがまたメンタル削られるからイヤ!(笑)
ちなみにこの後何を喋ったのかまったく覚えてません!(笑)
ま。そんなこんなでこの試験が終わったらもうメンタルぼろぼろ
で、相変わらず即座に次の試験が行われます。
進行役いわく
「先程会場前でお見せした写真をもう一度お渡しします。
それぞれのお料理の説明と合わせるワインの紹介。そして何故そのワインをチョイスしたのか理由も一緒に述べてください。制限時間は4枚の写真で2分です。はいどうぞ!」
って、またもいきなりのスタート!
てか今度は4つで2分て!!
短いわ!!!!

っていうツッコミを心にだけ留めてすぐに説明開始!!
一枚目の写真は鮭?みたいな食材が白いお皿に乗っていてその下にクリーム色ぽいソース。鮭?の上には謎の黒いブツブツ。このブツブツがキャビアなのかトリュフなのかも解らないドットの荒さ!!
もう振り切ってやるしかない!ようするにアレでしょ?本当のレストランでサービスする姿を見たいのでしょうから堂々とやるだけ!!
さもいつもやってますよ、みたいな感じで、どうせなら季節感とかも織り交ぜて!
「こちらは桜鱒のヴァプールです。(この時の試験は5月だったので春をイメージした食材だと言い切ったのです)桜鱒の下には白ワインと魚の出汁、レモンを使ったソースを敷いて。
また上には少し早いのですがサマートリュフを飾りました!(力強く言い切るのがコツ(笑))
合わせるワインはブルゴーニュの白も良いのですがボルドーの上流に鮭の放流で有名な川がありますのでそちらの白ワインをどうぞ。
ヴィンテージは2010年が素晴らしい出来栄えですのでそちらを。
桜鱒の旨味とボルドーブランのキリリとした酸と後口に広がる旨味がマッチして素晴らしい相性をみせてくれるでしょう。」
なんせ4つで二分!
わりと早口で喋ってしまったのですが構わずに次!
お次は緑鮮やかなアスパラが白い器に並べられ、その横に小さいココットが置いてありその中には正体不明のクリーム色のソース。
今回も季節感を織り交ぜて言い切る!
「こちらは今が旬のアスパラガスです。筋を取った後に軽く湯がいたシンプルなお料理です。
横に白ワイン、卵黄、バターで作ったソース添えてございますのでつけてお召し上がりください。
合わせるワインはアスパラの産地で有名なアルザスの白ワインはいかがでしょうか?
特級畑のリースリングの2009年辺りでしたらこのソースの濃厚な味わいにもよく合います。
どちらも春を味わうのにピッタリな組み合わせです。」
と、これを喋ってる間に残り1分の声。
もう超焦りました。
ただ、あくまで自分はサービス中のソムリエのテンション!冷静を装って(マジで装ってるだけで中身は超焦ってました)お次のお題。
次はいわゆるフライドチキン。
添えてあるものもフライドポテト。
これは超シンプルにいきました!

「フライドチキンにフライドポテトです。チキンには黒コショウもしっかり効かせています。
ドイツの白やボルドーの赤も楽しいでしょうが、ここはカリフォルニアの白はいかがでしょうか。
お料理とワインを合わせる時は産地だけでなく、その「色」を合わせるのも大事なポイントの一つです。
白身のお肉に白ワイン。
それもカリフォルニアの樽香が効いた深い味わいの白ならチキンとも好相性をみせてくれます。
チキンをほおばりながらゴクゴクとワインで流し込むイメージでも白の方がおススメです。」
はい。シンプルに仕上げたつもりでもちょっとしゃべりすぎた感じになってしまったような!そうでないような!でも本当に時間がぜんっぜん残ってないような!
もうマジで自分の感覚では残り10秒くらい?みたいになって焦って次に取り掛かりました。
「お次は仔牛のロースト。ローズマリーの香り。ソースは赤ワインとマデラ酒のソースです。(と安定で言い切る!実際にはお肉も仔牛かどうかは解らないしソースに至っては赤い以外の情報なし)
上質なお肉の旨味を存分に味わうにもここは最上級のボルドーの赤をおススメします。
サンテミリオンの2005年は近年の中でも特に優良なヴィンテージです。
しなやかなタンニンが肉の旨味を一段引き上げてくれます」
と、ここまで喋ったとこで時間切れ。
正直、やっちゃったかと思ったのですが試験会場を出るまで油断はできません。
深々とお辞儀をした後、「ありがとうございました!」と自分史上最高の笑顔と爽やかな雰囲気を醸し出して退場しました。(笑)
3⃣まとめ
試験が終わった直後はめっちゃ凹んでましたが、、、
まあ。
結果、合格となり。
さらに2019年の発表でぼくが受験した年以降の合格者をソムリエエクセレンスとする。となったのですが。
我ながらまぐれ当たりだったと感心してます(笑)。
なんせ座学の問題ですら教科書のどこにも載っていなかった問題が出ていて、なんだこりゃ?と試験が終わった後調べに調べたら教科書の上ではカタカナで書いてあった箇所が問題ではアルファベットで表記。
正直、そうとう意地悪です(笑)
今や10%を切る時もある超難関試験になっています。
ですが、おかげで同資格保有者も極少です。
ぼくの経験が皆様の役に立つことを願いつつ。。。
皆様!!!!
頑張ってくださいませ!!!!!