kyoto life blog
maiko food wine travel
ワインバーバハムートの日常

ワインバー バハムートの日常その9 役者とワイン

京都、花街の一角にひっそりと佇むワインバーバハムート。

今日もそのカウンターに一組のゲストがいた。

男性が2名と芸姑さんが1名の3名様。芸姑さんはポリフェノールさんの憧れのよし夏菜さんだ。

多少いつもと違うのはそのゲストの一人が今をときめくイケメン俳優佐藤たくみで、その前を陣取ってアルバイトのコダマちゃんが離れないことぐらい。

この佐藤たくみ。先日公開された明治維新の剣客を描いた映画で大ヒット。

映画はシリーズ化が決定し、早速続編の撮影が京都の太秦撮影所で行われていたのだ。

前作の撮影時に映画スポンサーに連れられて来店以降、スタッフや共演者と訪れるようになっていた。

ただの女子大学生のコダマちゃんが張り付くのも無理はないが、彼女もそういうお店のアルバイトとしてそれなりに教育されていたので無駄に張り付いたりはしない。

ただ、前回佐藤たくみが来店した時に「コダマちゃんも何か飲んでね」と名前を呼んで声をかけられたのが効いたのだ。

たった一回来店してその後半年も空いていたのにイチアルバイトの名前を覚えていてあまつさえ「何か飲んでね」と気遣える人柄にすっかり参ってしまっていた。

後で聞くとこの佐藤、天然の人たらしで特に考えずにそういうことを普通にできてしまうようで。

ただでさえ超イケメンの彼がそんな才能を発揮するものだから彼に接する人達は男女問わずついつい優しくなってしまうという話しが業界でも有名だった。

「たくみさん、今日ウィッグ。それ役柄のですよね?そのせいか目が剣客のまんまで今日コワいです」

「ああ!ごめんね!今日の撮影めちゃくちゃハードで、しかもホントにさっきまでやってたからぜんぜんスイッチ切れてないや!あああダメだ!ダメだ!うん!もう大丈夫!」

少し恥ずかしそうに照れた表情で顔をくしゃくしゃにして佐藤が顔の体操を始める。

イケメンのそんな屈託ない仕草にコダマちゃんまで顔が真っ赤になっていく。

「お兄さん、そんなんいけずやわぁ。コダマちゃん顔真っ赤にしてはるやん」

「ちょ!よし夏菜さん!そそそそそんなことないですから!」

「コダマちゃん。よし夏菜さんが顔真っ赤って言ったら顔真っ赤でしょ?」

「ちょ!ポリフェノールさん!わけわかんないタイミングにパーフェクトえこひいきでイジメるのやめてください!

芸妓のよし夏菜さんとポリフェノールのツッコミで余計に顔を真っ赤にするコダマちゃんに佐藤のマネージャーの小杉が話かける。

「まあ今日の撮影がハードだったのはホントなんだって。佐藤は典型的な憑依型の役者だから今日なんて撮影中に何回ヤバい!ってことがあったか。」

「いやあ。すいません。集中し過ぎてあの屋根の上完全に飛べるってなってましたね。」

「屋根を飛ぶ?」

「そう!原作の漫画だとさ、あの主人公は忍者みたいに屋根から屋根へと飛び移って夜の京を疾走するんだけど、その撮影がさっきまであったんだよ。

で、リアリティを追求するのが監督の方針なんでスタントマンやCG無しで本当に屋根の上を思いっきり走ってもらってギリギリで止まるっていう撮影があったんだけど、、、コイツ止まらないの!!

スイッチ入ってマジで走り抜けたあげくに飛ぼうとするから、そんなこともあろうかと待機してたスタッフ3人がおもいっきり身体使って体当たりでギリギリのギリギリで止まったのよ!最後は大の男3人ちょっと引き摺ってたもんよ!

「すいませーん。でも多分アレ飛び移れたと思うんですよねー(笑)あ、でももうやんないです!

「ホントにもうダメだからな!まあおかげでスゴイ迫力のシーンが撮れたって監督も喜んでたけどな。ってことでそんな役者バカになんか1本お願いするわポリフェノールさん

「はは。それはお疲れ様でしたね。ではピッタリな一本をご用意しましょう。」

そう言ってシャンパンを一本取り出しホストの小杉に確認する。

「え?それ?以外なチョイスだね!しかもラベルがなんか違う。面白そうだ、ぜひお願い!」

「ドン・ペリニョンです。ラベルはちょっとした限定のものでして。本日の撮影の無事終了を祝してお祝いを兼ねてどうぞ。たくみさんのご健康とご活躍に」

「ありがとうございます!んんん。ドンペリって何度か飲んだことがあった気がするけど今日のは格別だなあ。たしかお坊さん?の作ったシャンパンですよね?あ、今回の撮影の強敵が破戒僧だったからこれ?」

「いえいえ。そもそもドン・ペリニョン師は破戒僧ではなかったでしょうから(笑)そうですね。あえてこのチョイスに理由をつけるなら。今回のたくみさんの役柄が和製007だからって感じでしょうか?

そもそも僕が役者さんに飲んでいただきたいワインはいっぱいあるのでいつもチョイスが大変なんですけどね。やはり映画とワインって小道具としての活躍が多いですから。」

「お!さすがポリフェノールさん!そうなんだよね!映画とワインってタイトルでもう一本映画作れるくらいたくさんエピソードがあるからね!

「そうなんです。ドン・ペリニョンを愛飲していたことで有名なのは映画007に出てくるジェームズボンドですね。それもショーンコネリーの時代のボンドが飲んでいました。ニヒルでセクシーなボンドが飲むシャンパンに憧れない男はいませんでしたかね。」

「ショーンコネリーて、ポリフェノールさんはいくつなの?(笑)よく知ってますね!なるほどでも和製版の007か。やっぱり屋根くらい飛んでおいたらよかったかな。

「お兄さん!それはあきまへんえ。また小杉さんがストレスでお酒飲みすぎはりまっせ」

「それな!だいたいボンドは走って屋根は超えない!バイクに乗って超えるから!

どっちにしてもたいがいやん!(笑)とコダマちゃんが心の中でつぶやく。

ふと振り向くとポリフェノールが

「そういうことです。よし夏菜さんの言うことをちゃんと聞いてくださいよ!」

と、またデレていた。

この人、よし夏菜さんがいるとダメだと心の中でコダマちゃんがまたつぶやく。

わいわいと時間が流れ、また別のゲストが来店する。

しばらくして小杉が

「ポリフェノールさん。ラストもう一本いただこうかな?和製ボンドにもう一本は何がいいかな?」

待ってましたとばかりにポリフェノールが笑顔で応対し新しい一本を用意した。

つづく

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA