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ワインバーバハムートの日常

ワインバー バハムートの日常 その18 続その時のそのタイミング

ポリフェノールはワインをサービスしながら話しだした。

「ロマネコンティは古来よりブルゴーニュの最も誇り高いワインとして有名でした。

ですがナポレオン・ボナパルトのシャンベルタン好きが有名なところとなり、その地位はシャンベルタンへ。

ナポレオンの失墜によりシャンベルタンの地位もトップから陥落していきます。

1789年のフランス革命によって、ヴ―ジョ村でそれまでシトー派の修道士達がクロ(垣根)の中で作っていたブドウ畑が分譲され売却されていきます。

今まで修道院の中で消費され門外不出だったワインに世間の注目が集まり、実際にその味わいはそれに値するものだったのです。

19世紀後半を舞台とした映画「バベットの晩餐会」では当時の最高のワインとしてクロドヴージョ1845年が登場して食通の将軍が感動するシーンが描かれています。

さて、そんな訳でこちらの2本のワインをご用意しましょう。本来ですと若いヴィンテージのワインからご用意するのですが、今夜は飲み比べということなので同時に抜栓いたします。」

そう言ってポリフェノールはワインを抜栓、サービスした。

お酒の飲めないよし夏菜さんにも「香りだけでも」と、ほんの少しグラスに注ぐ。

グラスに目印をつけそれぞれ間違えないように、皆ワインを一口。

「うおっ。これはホンマにおもろい!」

「北原、これはなかなか良い趣向やったな!」

注文をした、北原、南川の二人は目をむいて驚いていた。

「ホンマ!美味しいわあどっちも!でもぜんぜん印象違うんどすね。同じワインなんどっしゃろ?」

芸妓の日ね史さんも同様の反応だ。

ポリフェノールがワインの説明を話しだした。

「まずはこちらのワイン2本ですが、それぞれヴィンテージ、作り手共に違うのですが、他にも違うところがあります。それはどこでしょう?」

「なんやろ?」「なんどっしゃろ?」

「片方はコダマちゃんが瓶に落書きをしている!」

北原のボケにコダマちゃんのツッコミが入る。

「北原さん、お客様ですけどなんでやねん!(笑)」

「あ!ワインの名前?片方はクロ・ヴジョーでもう片方はクロ・ド・ヴジョーになってる!」

北原のボケを完全にスルーした南川の回答に、これまた北原をスルーしてポリフェノールが答えた。

「はい正解!南川さん!その通り!

これちゃんと理由がありまして、「ド」が入ってる方がその昔シトー修道院が作っていた古い畑のブドウのみを使用していて「ド」がない方はそれ以外の畑のブドウも使用してるってことです。ブドウ畑はシトー修道院が作っていた時代から開墾され増えていますから」

「へー、そんなちょっとのことにも意味あるねんな。」

「ついでに、簡単に2本のワインの説明を。右がフェイブレイという作り手のクロドヴジョー2002年です。

02年とか04年とかのヴィンテージは3回熟成のピークを迎えると言われる特級畑のワインとしては一回目のピークにあるものが多いです。

ワインの色合いもまだ若さが残り、香りの余韻もフレッシュな酸がまだ生き生きとしています。

左のワインはルモワスネという作り手のクロヴジョー1985年です。

ルモワスネはネゴシアンといって、自社畑は持たずブドウを売ってもらって醸造や瓶詰めだけを手掛けます。

こちらの作り手は特に古いヴィンテージワインの生産を得意としていて、しかもこの1985年はブルゴーニュの赤ワインとしては過去100年におけるベスト5に入るグレートヴィンテージです。

先程の3回のピークの2回目といったところでしょうか。

フィネスと呼ばれる熟成によって現れる高貴な香りを堪能できます。

酸もまだありますが熟成からくる甘味が前面に出てきていますよね。

今回、同時に2本のクロドヴジョーをということでしたので、クロヴジョーとクロドヴージョ、2002年と1985年という対比になるワインを選びました。いかがですか?」

説明を聞いて北原が真面目な顔で話しだした。

どうやら先程のしょうもないボケを二人にスルーされたのでふざけるのをやめたようだ。

「どっちも美味しいけど、俺はこっちのフェイブレイの2002年が好きやなあ」

「そうどすね。ウチもこっちが好きどす」

あまりお酒は飲めないのだが味には敏感なよし夏菜さんも同意する。

「人生もそうなんですがワインにも出会いのタイミングっていうものがあります。今の北原さん、よし夏菜さんにこのワインの今のタイミングが合ったんでしょうね。

同じワインでもこれが5年後や5年前なら違った感想になったかもしれませんから。」

ポリフェノールの話しを聞いて北原が物思いに耽るような表情で話し出した。

「この2002年の方を飲んでたら急に息子の事考えてしもてなあ。まだ高校生なんやけど、俺や祖父の後を継いで医学の道には進まへんで商社で働きたい言うてるんや。

俺としては跡継ぎになって欲しい思うてたんやけど、こればっかりは息子には息子の人生があるし好きにさせてやるしかないなってな。

せやけど、曲がりなりにもそこそこ大きい病院の跡継ぎを蹴ってまでって、どっか思うてしまってたんやけど。

このワインと一緒や。

まだまだ若さがあって酸も残ってる。

せやけど、充分に人を魅了するだけの力も持ってる。

ここからどうなるかなんて誰にも解らんけど未来に可能性を感じられるポテンシャルもをちゃんと見せてくれてる。

信じるしかないんや。

まして親なんやしな。帰ったらちょっと話そうと思ったわ。」

北原の感想に今度は南川が

「俺はこっちのルモワスネ1985年やわ。味も香りも好きやけどなんか王者の風格みたいなんを感じる。余裕っていうのかな?これこそチャンピオンのワインちゃう?

北原が息子のこと言うから急にこっちまで考えてしもたけど、俺は仕事のことがちょっとなあ。

ウチの製薬会社ってまだまだ業界としては新参者なんやけど勢いだけはあってな。業績も右肩上がりで今度かのT製薬と業務提携のプランが持ち上がってるんやけど。

そんな老舗との業務提携なんてアッサリこっちが飲み込まれるだけちゃうかって会議も困窮してて、、、

でもこのワイン飲んでたら格に卑屈になるよりこうやって飲んでみて。そのうえで相手の美味しいとこを勉強させてもらう方がよっぽど建設的やわ。こうやって若いワインと飲み比べてみいひんかったらヴィンテージワインの魅力も解らんかったわけやしな」

「アホ。オマエが相手に遠慮して飲み込まれるようなタマかいな。最初からどう料理したろうかて思ってたくせによう言うわ」

「オマエのほうこそ、一回息子ちゃん外で勉強させたったらええやん。別に医者にならんでも将来、理事長として経営には入ってくれるかもしれんで。そうなったらよっぽどオマエよりええ仕事するかもな」

言い合いながらニヤッとする二人に日ね史さんが

「お二人ホンマに仲がええんどすなあ。妬けるわあ(笑)」

「誰がや!」「誰がや!(笑)」

まったく同時のツッコミに「やっぱり仲よろしおすやん(笑)」と言われて大笑いする二人。

4人は大いに語らい合い素敵な時を過ごした。

こうして今夜もワインバーバハムートの夜は更けていった。

ワインにも出会うべき「時」がある。

早すぎたり遅すぎたり感じることもあるがそれはそれで後々の経験としてちゃんと生きている。

よく飲み頃のワインという話しがあるが、実は一本一本のワインそれ自体がかけがえのないものなので開けた時が「その時」とも言える。

皆様の人生に、よき時よきワインが恵まれますように。

願わくば、よき仲間と共に。

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