今日はアルバイトの私、コダマちゃん一人のワインバーバハムートです。
ソムリエのポリフェノールさんがお向かいのお茶屋「やましろ」のお座敷で宴会の出張ソムリエとして呼ばれている為だ。
ワインバーバハムートの営業時間は通常なら19時から。
お茶屋さんの宴会は18時くらいからがほとんどなので、こうしてソムリエとして呼ばれて接客することがたまにある。
ワインの売り上げはそのままバハムートの売り上げになるし、どのみちワインバーの実質の営業時間は21時頃からなので相互にちょうどいいのだ。
なんなら「やましろ」で宴会を終えたお客様がそのままバハムートに飲みに来てくれることもあるし、バハムートのお客様として一定以上通った方をオーナーかポリフェノールさんが「やましろ」に紹介してお座敷に上がってもらうこともある。
敷居の高いお茶屋さんの切り口としては程が良いのでこうした花街ではバーやワインバーが持ちつ持たれつでやっているところが多い。
もちろん素性の知れない方や飲み癖の悪い方を紹介すると相手を困らせることになるので、紹介するにはよく見極めてからの話ではあるのだが。
ちなみに所謂「一見さんお断り」はワインバーバハムートでも採用のルールだ。
そもそもこのルールは、舞妓さん芸妓さん女将さんと女所帯の館の中に知らない男の人を入れないのは当たり前でしょ?っていうのが発想の始まりだ。
お茶屋さんというのはたいがいの場合がそこで生活をする女将さんや舞妓さん達の住居を兼ねている。
お酒を飲むのが前提の接客の場所に知らない人を自宅に招く者などいない。
だから、紹介があって初めて成り立つ「一見さんお断り」というルールができたのだそうだ。
なるほど、確かに私だって知らないおじさんを家に招いてお酒を飲んだりはしない。(笑)
友達が連れてきたその友達というなら随分ハードルは下がるもんね。
さらにちなみにちなみに、
お茶屋さんとは別に置屋さんというのがある。
お茶屋さんはお座敷貸しをする場所のこと。
お客さんがお座敷に上がって仕出しのお料理なんかを食べて舞妓さん達の接待を受けて舞なんかを観覧するのがこのお茶屋さん。お茶屋さんの女将さんが舞妓さんやお料理なんかの手配をしてくれる。
置屋さんはその舞妓さん達が住んでいる場所で、置屋さんで寝泊まりをしてそこの女将さんから言葉遣いや作法を学び、各種お稽古事に行かせてもらうのだ。
ただし、この「お茶屋さん」と「置屋さん」が合体しているところもある。
その場合は一階が間口、二階がお座敷、三階が舞妓さんの住居。なんていうパターンもあるのだ。
店のお庭の掃除をしながらぼーっとしてたらポリフェノールさんがワインを取りに来た。
どうやら同じワインをもう一本ってことみたい。

後でポリフェノールさんに聞いたら今日のワインはフランス、ブルゴーニュの一番下のランクのブルゴーニュルージュなんだけど、作り手さんはブルゴーニュでもトップクラスのクロードデュガというとこのものらしい。
ポリフェノールさんいわく「ブルゴーニュは作り手さんで選ぶことを覚えるとハズレのワインにあたることはほとんどなくなるよ」とのことで。
別にソムリエを目指してないんだけど、なんとなく興味が出てきちゃった私はしっかりそれをインプット。
今度、ここのカウンターでもご相伴に~なんて思ってたらしっかりテイスティンググラスに一口入れて持ってきてくれた。
時々、超能力者なの?って観察力がコワい(笑)
一番下のクラスというにはしっかりとした赤色。ガーネットかな?
照りツヤがよく、口当たりの甘い香りからフィニッシュのキュッと上ってくる酸味までが小気味いい。
よくわかんないけど、キュートなワインだなあって感じの印象だ。
うーん。やっぱりソムリエ目指そうかしら(笑)
てなことを考えてたら、ようやくお勤めを終えてポリフェノールさんが帰ってきた。
今日はお持ち帰りのお客さんはないみたい。
「ただいまー。電話とか鳴らなかった?今日はお持ち帰りのお客さんはないのか?みたいな顔してるけど、ないよ。お客さん達明日は朝一でゴルフだから今夜は早くお休みになるみたい」
ほらこれ!!
この人、時々こういう人の頭の中覗いてくるの!!
コワいわ!!
「ちょ、もうその勝手に人の頭の中覗くのやめてください!!趣味悪いですよ!!」
「そうなんだよねえ。ぼく、ワインの趣味以外で褒められたことがないの。もう諦めて(笑)」
「諦めさせないで!!ほんんんっとに心の一見さんお断りを採用して欲しいです!」
「お♪そりゃあ上手いこと言ったねえ(笑)」
そんなやり取りをしてるうちにお客様もちらほらと来店された。
こうして今夜もワインバーバハムートの夜は更けていった。