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ワインバーバハムートの日常

ワインバー バハムートの日常 その31 生まれ年って嬉しい

京都、花街の一角にひっそりと佇むワインバーバハムート。

今夜のカウンターには常連の田島が友人の大林とその息子兄弟を連れて来ていた。

田島は関西一円の自動車販売の会社を経営する社長にして、日本でもトップクラスのワインコレクター。

その為に日本ソムリエ協会の名誉ソムリエに認定される程だ。

知識も豊富。

ワインをコレクションするだけではなく、しっかりと飲むほうも嗜むのであちこちの有名なソムリエ達とも既知の仲だ。

ポリフェノールもその一人で、田島とは他人が聞いたらマニアック過ぎて理解不可能なワイン話しを延々としゃべっている。

今夜も田島は来店するなり、

「よう!ポリフェノールさん!早速やけどお水ちょうだい!と、ワインはブルゴーニュがええな!適当に持ってきて」

田島の言う「適当」は「適当に何本か今日のおススメを持ってきてくれたら選ぶわ」ということなので、ポリフェノールは3本のワインを選んで田島の前に並べた。

田島はそれらのワインのラベルを一本づつ吟味するなり、大笑いしながら

「こっちとこっちのワインを2本とももらおうか!ほら、見てみ!エシェゾーの99年とシャンボールミュジニーの95年やって!」

そう言って連れてきた友人の大林とその息子兄弟の前にワインのラベルを向けた。

大林とその息子の誠一と征二の三人が声を揃えて驚くのでアルバイトのコダマちゃんが思わず訊ねる

「ど、どうされたんですか?なんかポリフェノールさん変なワイン持ってきちゃいました?」

田島が笑顔でコダマちゃんに答える

「いやいや違うねん。95年が誠一の生まれ年。99年が征二の生まれ年やねん。いやあ流石やねえポリフェノールさん」

「ほんまですよね!え?知ってたん?そんな話ししてたっけ?ググった?(笑)」

「いえいえ。本当にただの偶然ですよ(笑)たまにこういう事があるんですが確かにご兄弟お二人とものそれぞれのヴィンテージとは出来過ぎでしたね。」

「ほんまにな!じゃあこれは同時に開けて並べて味わおうか!自分等もなかなかそういう機会ないやろうしな」

こうして二本のワインが同時に抜栓され、グラスに目印をつけて並べて提供された。

ポリフェノールが改めてワインを紹介する。

「お兄さんの方のワインがシャンボールミュジニーの1995年の一級畑で作り手ロベール・グロフィエ。

弟さんの方がエシェゾーの1999年で作り手がジャン・グリヴォ―です。

どちらも当たり年。どちらも作り手は超優良生産者として有名です。いかがですか?」

田島はそれぞれの香りと味わいを確かめるようにゆっくりと楽しむ。

「うーん。良いねえどっちも。それぞれに良さがちゃんと出てるわ。エシェゾーはらしさが全開や。ジビエと一緒にやりたいような力強さと野性味があるし99年ってよく考えたらもう20年以上経ってるのにまだまだ頑強や。

95年は熟成から来る甘美な香りを纏っていて開けてすぐに楽しめる。シャンボールミュジニーらしい華やかな香りも健在や。

どっちがウマいかって聞かれたらどっちもウマいな!」

「田島さん。こっちは面白いことになってるわ。兄弟二人は二人とも自分の生まれ年じゃないほうがええみたい」

大林は嬉しそうに我が息子達の様子を見ている。

「そうなんですよね。ぼくは弟の生まれ年の99年の方が好きです。力強くてワイルドな感じがええわ!ほんまに征二みたいな感じ。」

「ぼくはお兄ちゃんの95年の方がええな!なんとなく上品な香りがいいわ。ま、お兄ちゃんが上品かと言うとそれは違う気がするけど(笑)」

言われて兄の誠一も反撃する。本当に兄弟仲が良いようだ。

「あーはっはっは!いやあよう解るわ!ウチも男兄弟がいるけど兄はどっちかっていうとのんびり屋。弟はやんちゃ坊主。そういうもんやな大林!」

「ほんまにそうやで田島!せやけどこんだけ性格違うのにこうして親についてきてくれるんやからな。二人とも優しい子やわ」

「そうですよねー♪お2人とも奥様が良い教育をなさったんでしょうね!」

コダマちゃんのそんな何気ない一言に座っていた男4人が4人ともキュッと背筋が伸びた。

「アカン。アカンでコダマちゃん。オレのとこも大林のとこもどっちも恐妻家やねん。なあ
オマエのとこのお母ちゃん超コワいもんな!」

「はい!そうなんですよね!この前、征二が人生初の午前様で帰宅したら鬼の形相で「なんや!稼ぎもないのにいっちょ前に午前様か!100年早いわ!!」って怒られてて。

こっちまで怖くなって部屋からしばらく出れへんかったんですよ」

「ほんまやな!アレは怖かったわあ。アカン。なんか今日ももう遅いんちゃう?帰ろうか?」

急にびくびくしだす男達を見て、安定の空気クラッシャー、コダマちゃんがまた適当なことを言い出す。

「あははははは!皆さんホントにお母さんがコワいんですねー。でもそれなら次回はぜひともご一緒にいらしてください。それなら午前様になっても怒られませんよ!」

「そ、そうやな。そうしよう!ぜひともそうしよう!!なんやったらお前らの生まれ年のワインってことはカミさんに頑張ってもらった年ってことやもんな!」

なんとなく平静を取り戻してきた田島はそう言った後、すがるような目をポリフェノールに向けた。

「はい。それでしたら銘柄は変わるかもしれませんが、ヴィンテージは次回も同じものをご用意できるようにしておきますよ。」

ポリフェノールが笑ってそう答える。

ホッと胸をなでおろす男達。

「でも。そう思うとホントにそうなんですよね。これ、オレ達が生まれた年ってことは十月十日母が頑張ってくれた年でもあるってことですもんね。」

「そうやんなお兄ちゃん。あ、そういや来月お誕生日やん。なんかしよか」

4人はそれを機に今度はお互いの母であり妻である人へのプレゼントを考えて話に花を咲かせていた。

今夜もこうしてワインバーバハムートの夜は更けていったのだった。

生まれ年のワインって確かに嬉しいものです。

ワインバーでサービスをしているとこの「生まれ年」というものに他のサービスマンよりも出会う機会が多い気がします。

ですが、この生まれ年とはまさにそのお母さん達が頑張った年でもあります。

そうした機会を一緒にお祝いできることって特に素晴らしいな。と最近特に思う私でした。。

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